研究グループは、北大大学院先端生命科学研究院の水波誠教授(神経生物学)と東北大大学院生ら。ヒトなどの哺乳類は、行動する前に過去の記憶を呼び起こして考えるが、その際に脳内で特定の物質が放出されるという。コオロギの脳は、神経細胞の数で比較すると、人間の脳の10万分の1ほどの小ささ。これまでコオロギなどの昆虫は、一定の学習能力はあるが、より反射的、本能的に行動し、こうした物質の働きは無関係とされてきた。
水波教授は、昆虫の中では人間への警戒心が弱く扱いやすいコオロギを使い、2年前から脳の伝達物質の働きを研究。コオロギに果物のにおいをかがせた後、水を与えたものと、塩水しか与えられなかったものに分けて、脳内の伝達物質の働きを比べた。
においをかぐと水がもらえるコオロギは、学習によって水を取るためににおいに近づくが、水を取る「快感」を神経に伝える脳内物質「オクトパミン」を阻害する薬剤を注射すると、においの発生源に集まらなかった。逆に塩水が与えられたコオロギは、においに近寄らないはずだが、「不快感」を伝える脳内物質「ドーパミン」を薬剤で阻害すると、においを嫌わなかった。
このことから、コオロギは反射的でなく、脳内の伝達物質の放出によって、学習したことを読み出していることが分かり、高度な哺乳類の脳と類似点があることが分かった。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/180987.html