2009年08月24日

フラクタル日よけで涼しくなる

夏の日の木陰がひんやり涼しいのは、どうしてなのでしょう。「実は、木の形に熱を逃がす秘密があるのです」と言うのは、京都大学大学院人間・環境学研究科の酒井敏教授。樹木の形を見習った「フラクタル日よけ」を開発し、水もエネルギーも使わずに都市を冷やす方法を探っています。

 人工衛星で地上を観測すると、樹木が多い郊外に比べて都市は地表温度が高いことがわかります。どうしたら都市を冷やせるのか。酒井教授は、ビルや道路が大きな表面積を持っているのに対し、樹木は小さな葉が集まっていることに着目しました。表面積が小さいものほど熱くなりにくいことも、面積の違う金属板に日光を当てる実験を行い確認できました。

 しかし、小さな板でもびっしり敷き詰めれば大きな板と同じ。どう並べればより熱くなりにくいのか、酒井教授はさまざまな並べ方でその温度を比較しました。

 その結果、全体を見てもその一部分を拡大しても同じ形をしている「フラクタル」という形に並べると、温度が上がりにくいことが分かりました。

 フラクタルは入り組んだ海岸線や腸の内壁など、自然界によく見られる形です。「樹木の葉もフラクタルなのかも」と酒井教授は考え、樹木の葉の位置をレーザーで調べました。するとやっぱり、葉はフラクタル的に並んでいたのです。

 樹木は大昔から、フラクタル状に枝や葉を伸ばして暑さをしのいできたのかもしれません。「水を蒸発散させる時の気化熱だけで太陽からのエネルギーを逃がそうとすると、樹木は干からびてしまう」と酒井教授。そのため、形の工夫が必要になったのでしょう。

 この樹木の知恵を日よけに応用したのが、日本科学未来館の入り口のフラクタル日よけです。八月三十一日まで設置されています。

 日よけ自体の表面温度は、晴れた日だと普通の平らな日よけより一〇〜二〇度も低くなります。すき間からさす日差しは、木漏れ日のように涼しげです。夏休みで未来館を訪れる機会があれば、このフラクタルが生み出す涼しさをぜひ感じてみてください。


http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2009081802000128.html
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金縛りの正体を解明する新たな研究

目を覚まし、意識はあるのに、動くことはできない。胸の上に何か邪悪なものがのしかかっているようだ……これは「睡眠麻痺」[sleep paralysis。いわゆる「金縛り」]という体験であり、標準的な医学的説明は、「夢の世界で覚醒した」というものだ。

この奇妙な現象は、人口の約半分に、少なくとも1度は起こるようだ。(メキシコでは「死体がのしかかる」と呼ばれるこの現象について青少年の9割が知っており、自分自身でこれを体験したという者は25%にのぼるという 調査が発表されている。)
これを経験する人は、自分がどこかわからない世界で、数秒から10分程度目を覚ましたといい、その前兆として、暗く低い音調の幻聴を耳にすることが多い[およそ1〜3キロヘルツのザワザワとした、強い圧迫感を伴う独特の前駆症状の数秒後に全身の随意運動が不可能となると される]。
ニューファンドランドからカリブ海の島々、日本など、世界中の伝統的文化が、これを心霊現象だとして語って来た。[ 睡眠麻痺は世界各国で、精霊などが襲うものだと考えられて来た。例えば中国では"鬼圧身"あるいは"鬼圧床" と呼ぶ。文字通り訳せば「幽霊に抑えつけられた身体(寝床)」という意味。一方、日本の用語「金縛り」は、もともとは仏教用語。不動明王が持つ羂索(けんさく)の威力により、敵や賊(転じて煩悩)を身動きできないようにする密教の修法である「金縛法」を由来とする]。
だが、『The Psychologist』誌に掲載された新しい論文を見ると、研究者たちはこの状態の神経学的基礎を理解し始めていることがわかる。

ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジにある Anomalistic Psychology Research Unit(特異的心理学研究部門)の研究者、Julia Santomauro氏とChristopher C. French氏は以下のように書いている。「この研究は、睡眠麻痺はREM(急速眼球運動)睡眠、特に、入眠期REM睡眠と強く関係していることを示唆している。睡眠麻痺の要因になるのは、シフト制の仕事や時差ボケ、不規則な睡眠習慣、過労、睡眠不足などが考えられる。これは、こうしたことが睡眠と覚醒のサイクルを乱し、『入眠期REM睡眠』を起こすから、という可能性がある」
つまり、REM睡眠の一部を体験するということだ。

ルイジアナ州立大学健康科学センターの「睡眠学プログラム」で睡眠について研究しているDavidMcCarty氏の説明によると、睡眠には様々な段階があり、これらの段階で発生する別々の要素がある。

REM睡眠中には、様々な感覚器官は機能しているが、意識はなく、筋肉はほとんど完全に麻痺している(一般に無緊張症と呼ばれる状態だ)。
「これらの複数の要素はREM睡眠中にはひとまとまりになっているが、実は別々に存在しうる」とMcCarty氏は言う。つまり、睡眠麻痺状態のときは、REM睡眠時の重要な2つの要素はそのままだが、意識だけが回復している[睡眠時の全身の脱力と、感覚および意識の覚醒が同時に起こった状態になる。なお、睡眠中に何度も起こすようなストレスを与えることで人工的に金縛りを作り出す事も可能と いう]。

McCarty氏によれば、睡眠麻痺は通常は一時的なもので、生命の危険もない。一方、睡眠麻痺との関連性を指摘されている神経疾患に発作性睡眠(ナルコレプシー)がある。この場合も睡眠麻痺と同様の症状が現れ、REM睡眠の特徴的要素のいくつかが現れるとMcCarty氏は言う。

ナルコレプシーでは、夜間は頻回の中途覚醒や、幻覚や金縛りを体験するため安眠できず、日中において場所や状況を選ばず強い眠気の発作が起きる。このとき、金縛り・幻覚・幻聴の経験がある人も多い。視床下部から分泌される神経伝達物質 オレキシンの欠乏と関連しているとされている。一方、頻繁に睡眠麻痺にかかる人々は、平均的な人よりもパニック障害にかかりやすい傾向があるとする研究もある


http://wiredvision.jp/news/200908/2009081023.html
posted by 科学くん at 11:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

チリで新型インフルエンザが人から鳥への感染初確認

 南米チリ政府は21日、人間から七面鳥に新型インフルエンザが感染したとして、七面鳥飼育場2カ所を隔離した。AP通信が伝えた。新型インフルエンザは、人間から豚への感染例はあるが、人間から鳥類への感染が確認されたのは初めて。種を超えた感染により、ウイルスが強毒化する可能性も指摘されている。

 新型インフルエンザウイルスには、人、豚、鳥を起源とする遺伝子がある。チリ政府はウイルスは変異していないとしている。

 現在真冬のチリでは、今月15日までに約35万人の新型インフルエンザの感染疑い例があり、うち1万2175人の感染が確認された。感染者のうち128人が死亡している。

 ▽大槻公一・京都産業大教授(獣医微生物学)の話 鳥の体内で強毒化するインフルエンザウイルスは「H5」か「H7」型で、今回のウイルスのH1N1型が強毒化する可能性はあまり高くないだろう。このため公衆衛生上の脅威は低いと思われるが、七面鳥から、さまざまなウイルスを媒介できる豚に感染し、それが再び人の間で広がる恐れはある。やはり感染拡大防止が大切だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090822-00000019-mai-soci
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過度の運動は中毒になる可能性がありますよ

 新しい研究によると、トレーニングをやめられないような筋金入りのランナーは、麻薬中毒に似た状態になっている可能性がある。“ランナーズハイ”として知られる状態がそれにあたる。ランナーがそのような多幸感を得るためには距離を相当伸ばさなければならないが、その状態で走ることを強制的に止めると、うつ状態に陥る可能性もあるという。
 このような“禁断症状”が現れることから、運動時に中毒性のある化学物質が体内で自然に生成されているという説が唱えられている。

 アメリカのマサチューセッツ州にあるタフツ大学のロビン・カナレク氏率いる研究チームは、この説を検証するため、ラットをケージの回し車の有無で分けて実験を行った。

 7日後、回し車を与えられたラットはオス・メスともに、回し車を使って走る量が自然と増加した。「回し車で走るラットが徐々にその運動量を増やすことはさほど驚くことではない」と同氏は言う。

 9日目に、運動量の増えたラットとそうでないラットそれぞれを、さらに複数のグループに分けた。それまでエサは常に食べられる状態だったが、運動量の多いラットの約半数は食事を1日1回1時間だけに制限した。

 エサを制限されたラットは、スポーツ選手にみられる“アノレキシア・アスレティカ”という摂食障害に陥り、さらに劇的に運動量を増やして、体重を減少させ始めたのである。

 アノレキシア・アスレティカは、人間が発症した場合でも命にかかわることのある精神疾患で、競争原理のプレッシャーによって追い込まれた患者は強迫観念にとらわれて運動を続け、体重を減らしていく。

 カナレク氏は、この精神疾患が発症するときに活性化する化学経路が、麻薬中毒と同様なのではないかと考えた。

 研究チームはこれを検証するため、ナロキソンという化合物をすべてのラットに注射した。ナロキソンは麻薬拮抗薬(モルヒネなどの作用を抑える薬)として用いられることも多いが、中毒者に注射すると、身もだえ、歯ぎしり、嚥下運動といった禁断症状を引き起こす。

 同氏はその後、経緯を知らない第三者にナロキソンを注射したラットの行動を書き留めるよう指示した。すると、最も深刻な禁断症状が現れたのは最も運動量の多かったラットで、回し車のないケージにいたラットにはあまり禁断症状が出ないことが明らかになった。

 とはいえカナレク氏は、人間の過度の運動が依存症に直結すると心配しているわけではない。「運動量の多いラットがナロキソンによる禁断症状を示したといっても、程度としてはモルヒネ中毒ほど重いものではなかった。つまり、運動の中毒性はそれほど高いものではないと考えられる」と話している。

 運動に中毒作用があったとしても、それをうまく利用できる可能性もある。「薬物依存症患者の治療に運動を利用することで、実際に効果を上げられるかもしれない。それは、今回の成果のひとつといえるだろう」と同氏は語った。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=37666125&expand
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2009年08月23日

衛星ひまわり8・9号、運用を民間委託

 気象庁は5〜7年後に打ち上げる気象衛星「ひまわり」8号、9号の管理運用を民間企業に委託する方針を固めた。
 民間の資金や技術を活用するPFI方式を、気象衛星に導入するのは初めてで、コスト削減が期待できる。企業が地上送信施設を調達し、衛星の向きや軌道を修正したり、観測データの送受信を行う。
 ひまわりは故障に備えて2基体制で運用されており、現行の6、7号は2015年に寿命を迎える。1〜7号は、共同で打ち上げた科学技術庁(当時)や国土交通省航空局が運用したが、次期衛星は気象庁が単独で打ち上げ、運用も担当する。
 衛星2基の運用には、準備期間を含めた20年間に200億円以上の経費がかかると見込まれる。同庁には運用業務の経験や地上施設がないが、民間委託により最大数十億円のコスト削減がはかれるとして、来年度予算案の概算要求に盛り込むことを決めた。受注には通信や放送など民間の衛星で実績を持つ企業数社が、関心を示しているという。
 次期衛星2基の製造については、三菱電機が293億円で落札した。

http://www.yomiuri.co.jp/space/news/20090822-OYT1T01043.htm
posted by 科学くん at 20:35| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする